奥日光探鳥記後編です。
湯滝で昼食を済ませた後、湯ノ湖・湯元温泉を経て刈込湖・切込湖へ続くトレッキングコースを歩いた。この辺りまで足を延ばした理由はコマドリ。コマドリの生息地は標高1500m以上のため戦場ヶ原や軽井沢では会えず、山を登るしかないのだ。湖自体も見てみたかったので、山歩きがてら会えたらいいなぁ……というゆるい心積もりで出かけたのに、結局コマドリのさえずりを追って右往左往し、慌ただしい行程になってしまった。まだまだ落ち着きが足りないな。
湯ノ湖から湯元温泉へ
湯滝をあとにして、滝沿いの階段を上っていく。ものすごく急で段数も多く、休み休みで何とか登りきる。
すると、左手に湯ノ湖が見えた。うっすら硫黄のにおいがする。山間に佇むエメラルドグリーンの湖は透明度も高く、水面も静かでとても綺麗だった。
湖沿いの道を歩くが鳥は全然いない。湯元ビジターセンターのサイトによると夏の湖周辺にはイカルやウソ、ジュウイチなどがいるらしいので期待していたけど、コガラ・ヒガラの鳴き声やミソサザイのさえずりを聞いたほか、湖畔でまったりするマガモのエクリプスを見かけただけだった。
30分ほど歩き続けて湯元温泉に到着。釣りを楽しんだり犬を散歩させている人がいたりカップルや親子連れがそぞろ歩いていたり、レイクリゾート的な雰囲気のある場所だ。宿も多かったので、コロナ騒動が明けたらここに宿を取ってゆっくり野鳥探索するのもいいな。
トレッキングコースの入り口は源泉の先にある。硫黄のにおい立ち込める源泉の近くには小さな湿原(湯ノ平湿原)があり、マガモの親子が採餌していた。
お風呂のアヒルみたいでかわゆい……。
何を食べているんだろう。
ミソママ奮闘中
湯元温泉近くの入り口からは、ひたすら急な上り階段が続いていく。ザ・運動不足の自分はこの時点で心が折れそうになり引き返すかどうか迷ったが、行けるところまで行こうと覚悟を決めた。登りきると金精道路に出、刈込湖までは2.3kmと看板が立っていた。そこからはまた上り坂。しかしここから先は平坦な道も増えてきて、少し楽になった。
横合いの木にさりげなくオオルリ兄貴が(ピンボケ)!戦場ヶ原とは鳥のメンツも少し違うようだ。鳥の姿・鳴き声が密になってきて、段々楽しくなってきた。こんな密なら最高!
朽ち木の根元で茶色い小鳥が動いているのを見かけた。見やすい所に来るのを待っていたら、湯滝に続いてミソサザイを発見。
他にも何かいるな?と思ってよく見たらなんと2羽の子ミソがいた!
成鳥より色が黒っぽく、くちばしも黄色い。何気にレアかもしれない。
ママを呼んでいるのかな?
よく見たら、オバQみたいに頭の毛が立ってて可愛いな。
近くではミソサザイのさえずりも聞こえた。ミソサザイはメスのワンオペ育児なので、もしかしたらパパは別のメスをナンパ中なのかも。負けるなミソママ!
そのうち上り坂がキツくなり、丸い石のはめ込まれた石段を登りきると小峠についた。登り口からここまで、だいたい1時間。
ここから刈込湖までは1.1km。ちょうど半分くらいだ。日影のベンチに座って休憩。暑いしマスクが蒸れるし喉が渇く。すでにペットボトルの飲み物は半分で、この先の体調が心配になる。休んでいると、小学生くらいの子供を連れた親子が通りかかった。「こんな小さな子も歩いてるんだし、頑張るか」と励まされ、道行きを再開した。
コマドリとニアミス
小峠から大きな岩を通り抜けて登っていくと、また平坦な道に出る。この辺りは歩きやすく、あっという間に「刈込湖まであと0.3km」の看板にたどり着く。しかし、ここからがとても長かった。
この辺りから高低差のある下りが続き、足への負担が増していった。木の階段が随所にあるのでそれが救いだけど、それ以外は手をつきながら慎重に下って行った。そして、湖方面に階段を下りていく途中。
「ピチョリリリリリリ!」
!!Σ(゚Д゚)
事前にwebやCDで散々聴いた、コマドリの鳴き声だ!!
ここまでの苦労を吹き飛ばしてくれるほどの、清涼で力強い鳴き声。頑張って来てよかった~!!
さえずりは何度か聞こえ、そのうち一度はすぐそばだった。岩場の方を見ると、なんと少し離れた枯れ枝の上にコマドリが止まっていた。ラッキー!と思ってカメラを向けたが、途端にサッと飛び去ってしまい記録には残せず。じっと、また囀り始めるまで待てばシャッターチャンスもあったかも……。遮るものもなく、いい場所にいてくれたのに( ;∀;)
そのあともたびたび近くで声がしたので待機していたけど、そのうちに遠くに行ってしまった。
ところでコマドリの鳴き声は馬にたとえられるけど、実際聞いてみるとビブラートをきかせた感じが確かに馬の鳴き声風味かも。でもヒンカラララとは聞こえん(;'∀')
なんとかコマドリ
刈込湖まではさらにハードな下り。やっとこさ下りきるとバーダーさんとすれちがう。挨拶をすると「コマドリですか?」と聞かれたので、情報を教えていただくことに。その方によれば、刈込湖と切込湖を結ぶ道300mくらいの範囲でたまに顔を出してくれたそうだ。撮影した写真も見せていただいた。いいなぁ!
刈込湖は見事なエメラルドグリーン。
湖畔には流木や苔むした岩もあって風情満点。そのあたりからもコマドリの鳴き声がしたので登場を期待したけど空振り。苔岩の上なんかでさえずってくれたら最高だったなぁ。
岸辺で休憩したのち、教えてもらった道を少しうろつく。しかし、鳴き声はするのに姿は見えない。この時すでに15:00過ぎ。17:15分湯元温泉発のバスに乗る予定で、それを逃したら1時間後。足はかなり疲れているので帰りは時間がかかるのが予想できる。なので16:00までには引き返そうと決めた。15:30を回り、収穫なし。疲れたし喉も乾いたし、あきらめて戻ることにした。
すると……先ほどコマドリをチラ見した辺りに戻ったところで、ひときわ大きな鳴き声がした。
これは近くにいる!
今の場所にとどまっている間に何とか見つけないと。立ち止まり、暗い木陰にじっと目を凝らす。期待した枯れ枝の上にはいない。岩場や地面の上にもいない。でもやっぱり鳴き声は近い。
その時、低木の上に小さな影を見つけた。わー!!やっと見つけたーーー!!!
レンズ越しだと少しは色が分かるけど肉眼では本当に小さな黒い影にしか見えないので、本当によく見つけたなぁと思う……
コマドリ君はしばらく同じ枝で、喉を震わせて力いっぱいさえずっていた。その間、こちらはというとピント合わせに必死になっておりました。枝葉の入り組んだところにいるのでAFはきかないし、重たい望遠レンズを片手で支えてMFで合わせるしかない。腕ががくがく、下り坂で酷使した膝もがくがく。
こっち見た!覗いてるのばれちゃったかな??
APS-Cモードの750㎜換算で限界までズーム。
このあと開けたところに移動してくれるのを期待して待っていたけど、サッと岩陰にジャンプ、そのまま見失ってしまった。コマドリ君、本当にありがとう!!
そのあとはまっすぐ湯元温泉まで戻り、バスと電車を乗り継いで帰宅した。目標だったノビタキには会えなかったけど、最後の最後に素敵な出会いがあったので満足。高原とか山とか環境が違うところに行くと、一気に初見の鳥に会えるから楽しいな。
《まとめ》
生息地、生態を調べて、歩きまわって、空振りしながらやっと巡りあう。やっぱりこれぞバードウォッチングの醍醐味だな~と思うし、会えた時の喜びが全然違う。たとえばサンコウチョウなんかはいる場所がピンポイントでわかっててシャッターチャンスを狙いに行く感じだけど、いい写真は撮れても「見られた喜び」はどうしても薄れてしまう。そういう意味では、今回は久々に探鳥らしい探鳥ができた気がする。
オオルリ、キビタキをはじめコルリ、サンコウチョウ、コマドリなど今季は夏鳥運が結構いい感じ。それぞれ鳴き声や生態もわかってきたので、来年以降は見つけやすくなるだろう。
《見つけた鳥》
・初見:イワツバメ、ハチクマ?、アカゲラ、オシドリ、ホオアカ、コマドリ(6種)
・コガラ、オオルリ
ライフリスト現在109種